夏と秋の間で・甲

「お前、まさか本当に気がついていなかったのか?」



「いや・・・だって、あいつには好きな男がいるって言ってたぞ。」



「だから、その『好きな男』って言うのが、お前なんだろう?」



 ため息をつく速人。



 呆れていることは、その姿を見れば言わずとも分かる。



 確かに、その可能性をまったく考えてなかったと言えば、嘘ではあるが・・・。



「普通、女が男を前にして『好きな男がいる』って言えば、自分の可能性は真っ先に排除するだろう?」



 少なくとも、自分は大場さんを前にして『好きな女性がいる』なんてことは言えない・・・。



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