夏と秋の間で・甲
「ううん・・・ここにいて。もし今1人になったら、またここから動けなくなっちゃうかもしれない・・・。」



 失恋したばかりの頃、大場さんは学校に来ていなかった。



 携帯もつながらなかったし、当然メールも返ってこなかった。



 ・・・・・動けなかったのだろう。



 動けば現実が待っている。



 動けば、現実を思い知らされる。



 ・・・・・・・捨てられた現実を・・・・・。



 ・・・・・・・・・・・・・奪われた現実を・・・・・・・・・・・。



「分かった・・・。それじゃあ、しばらくここにいるよ。」



 そこまで言ったところで、突然、花火の音が望巳たちの鼓膜に響いた。



 ・・・後夜祭が始まった。



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