夏と秋の間で・甲
「そだね・・・ごめんね斉藤くん。こんなコトにつき合わせちゃって・・・。」



 だけど、大場さんは優しい・・・本当に優しい笑顔を望巳に向けてくれた。



 思えば、彼女はいつも笑顔を向けていた気がする。



 辛いときも、悲しいときも・・・。



 それが、彼女の処世術なのだろう。



「別にかまわないよ・・・。」



 だけど、そんな彼女に襲う人生はあまりに過酷な気がした。



 先輩を好きになってしまったばっかりに・・・。



 好きになった男が他の女が好きだったために・・・。



「ねぇ斉藤君・・・・。」



 大場さんが突然顔をうつぶせる。



 笑顔が崩れたのだろう・・・。



 分かりやすすぎるために、分かりにくい大場さんのクセ。



「なに?」



「・・・・・・・・・やっぱり、一人にしてもらっていいかな・・・?」



 顔をうつぶせたまま、決して自分の顔を見ないで声を上げる。



 震えた声。



 また、泣いている。



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