夏と秋の間で・甲
「・・・大場・・・さん?」



 声が上ずった。



 ・・・・・・どうして?



 そんなことを声に出して言いたいのに、言えない・・・。



「ごめんね・・・斉藤君・・・。本当にごめんね・・・。」



 大場さんの謝罪の言葉が嗚咽と一緒に聞こえた。



 薄い夏服が背中で湿って行っているのが分かる。



「だけど、私、本当に先輩のことが好きだったんだよ・・・これ以上にないぐらい先輩を愛していたんだよ・・・。」



 それは、常に笑顔で隠し通してきた大場さんの本音。



「分かってるよ・・・。」



 知っていた・・・。



 遊園地に行ったあの日から・・・。



 大場さんがどんなに先輩が好きだったのかも・・・。



 大場さんがいかに先輩しか見てなかったのかも。



 それこそ自分が入る隙がないぐらい・・・。



 なのに・・・。



 それなのに・・・・。



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