夏と秋の間で・甲
「時には気分転換も必要だ・・・。」



 不審に思いながらも、おとなしく速人にタバコを一本渡して火をつける。



 速人は一時期吸っていた時期があるので、大場さんのようにむせたりはしない。



 それでも、すごく不慣れな手つきで一息吸うと・・・



「なぁ・・・お前、何で後夜祭来なかったの?」



 唐突に聞かれた。



「はぁ?・・・朝言っただろう?だるいから帰ったんだよ。」



「そんな言葉を、俺が信じるとでも?」



 さすが、速人・・・・長い付き合いだけあって、嘘が付きにくい。



 望巳はタバコを一息吸って、上を眺めながら数秒間空に浮かぶ雲を眺めながら・・・。



「・・・別にやましいことをしてたわけじゃねぇよ。ただ、大場さんと少し話をな・・・。」



「それでか・・・。」



 何かに納得したような速人の表情。



「何が?」



「サンマ、お前のこと探しに行ったんだよ。でも、結局見つからなかったって・・・・泣きそうな顔しながら言ってきた・・・。」



 やっぱり、あの視線はサンマだったのか・・・・・。



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