夏と秋の間で・甲
「でも、俺は・・・俺の好きな女を泣かすようなヤツを友人とは思いたくないからな。」



 痛い忠告だった。



「ああ・・・・・・・。」



 短い返事にすごく曖昧となっている自分の気持ちを込める。



「・・・・・・・・・・まぁいいさ。それじゃあ、俺は部活にでも行く。」



 立ち上がり、背中を向ける速人。



「おぅ、またな。」



 明るく返事を返して



「・・・・もう、俺に気安く声をかけるなよ。」



 立ち止まって、顔を半分だけ向ける。



 すごく、怒気のこもった声だった・・・・。



「え?」



 速人の豹変に不思議な声が漏れる。



「・・・・・サンマは、おそらく今も泣いているぞ。さっきの俺の言葉、もう忘れたのか?」



「あ。」



 ・・・・・『俺は俺の好きな女を泣かすようなヤツを友人とは思いたくない』・・・・。



「すまない・・・でも、考える時間をくれ。俺は頭が悪いんだ。」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ。」



 短い返事の後に、速人は立ち去って行った・・・。




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