夏と秋の間で・甲
「どちら様ですか?」
顔を見ながら尋ねられる。
「あ、えっと~俺、・・・サンマ・・・じゃなかった、亜紀さんの友達の斉藤と申します。亜紀さんはご在宅ですか?」
予想はしていたとは言え、亜紀の母親と会話をするのは非常に緊張した。
「まぁ、それはそれは・・・わざわざアリガトね。どうぞあがってください。あの子、最近自分の部屋から出てこないのよ・・・学校も行きたくないって・・・。」
・・・サンマのヤツ、最近姿をまったく見ないと思っていたら、学校を休んでいたのか・・・クラスが違うから、気が付かなかった。
「はい。お邪魔します~。」
緊張した面持ちで、靴を脱ぎ、用意されているスリッパに足を通す。
小奇麗な廊下と玄関。熊の置物もこんな家なら、違和感がない・・・。
「亜紀~。あなたにお友達が来たわよ~。斉藤くんって、男の子!!」
オバサンが、二階に向かって声を張り上げる。
妙に『男の子』の部分が強調されたような気がしたが、気にするまい・・・・。
瞬間、扉の開く音がして、亜紀が現れる。
学校とは違って、質素な格好をした眼鏡に簡単に縛っただけの髪の毛の亜紀。
どこか、中学校の頃のあいつを思い出す・・・。