夏と秋の間で・甲
「ちょ、ちょっと亜紀、あなた何て格好で出てくるの?男の子って言ったでしょう?少し、着替えてきなさい。恥ずかしい・・・。」



 この際、男とか女とかは関係ないような気がするのだが・・・・。



「え?あ、そうだ・・・ちょっと待ってて。今着替えてくる。」



 慌てて部屋に消える亜紀。



 ドタバタという声と共に、悲鳴にも近い声が聞こえた。



 髪がうまくまとまらないが、様子から分かった。



「ごめんなさいね、斉藤さん。少しあがって待っててらして。」



 オバサン特有の手厚い気遣い。



「い、いや・・・ここで待ってるから大丈夫ですよ。」



 恥ずかしいから、つい断ってしまった。



「そう?でも、あの子時間かかるわよ。」



「いいですよ・・・。」



 何分でも何時間でも待つ気だった。



 俺はあいつのコトを何年も待たせたのだ・・・これぐらい自分が待つことなど、どうということはない。



「そうですか?では、今お茶をお持ちしますね。でも、亜紀に男の子が訪ねてくるなんて・・・。どうか、よろしくお願いしますね。あの子は、そそっかしいところがあるから・・・。」



 オバサン・・・何か勘違いしているぞ。



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