夏と秋の間で・甲
「どうして、家に来るんだよ?」



 亜紀は慌てているとも、泣いているとも取れるような声をあげる。



「・・・・・・だってお前、携帯もつながらないし、この方法以外にどうしろって言うんだ?」



 学園祭が終わった後、望巳は何度も亜紀の携帯に電話をかけたが、着信拒否設定がされており、つながることはなかった。



「あ・・・・ごめん。」



 素直に謝る亜紀。



「別にいいけど・・・とりあえず場所変えないか?」



 まだ、亜紀の家の前にいることは変わらない。



 下手をすれば、玄関先にいる亜紀の母親に会話を聞かれてしまう可能性だってある。



「うん。そうだね・・・・。」



 その言葉を聞いて、望巳は亜紀をバイクに乗せてエンジンをかける。



 警察に見つからないように、裏道を使ってたどりついた場所は、大きな林のある近隣の公園。



 自分の記憶の中では、亜紀と始めて会った公園だ・・・・・。



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