夏と秋の間で・甲
「私・・・ずっと、望巳のそばにいるって言ったのに、連絡すれば飛んでくるって、言ったはずなのにさ・・・。」



 そういう亜紀の声は、完全に泣いていた・・・・。



「気にしてねぇよ・・・。俺こそ悪かったな。後夜祭のとき、電話に出れなくて・・・。」



「え?あ・・・・うん。」



 消え入りそうな返事。



「俺さ・・・あの時、大場さんと一緒にいたんだ。」



 言うべきかどうか悩んだが、これを言わなくちゃ始まらないような気がした・・・。



「うん。知ってる・・・・。」



「・・・・そうか。」



 短い返事。



 二人の間にしばしの沈黙の間が流れ、しばらくしてから亜紀の方が先に口を開く。



「でも、良かったね望巳、大場さんたち別れたんだって?チャンスじゃない?頑張りなよ。」



 言いながら笑顔を向けた亜紀の表情は、見ているものが辛くなりそうなぐらい悲痛で悲しそうなものだった・・・・。



「イヤ・・・別に・・・。って言うか、もう大場さんのコトはどうでもいいよ・・・。」



 タバコをくわえて一息。



「え?」



 意外すぎる言葉だったのか、サンマはすごく驚いた表情を見せる。



「何かさ。・・・俺、お前がいない間に色々考えたんだ。」



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