夏と秋の間で・甲

「でも、気持ち分かるよ。」



 亜紀が隣で腰をつけて、箱からタバコを取り出してから火をつける。



 体育館の裏で紫煙が二つ並んで仲良く真上に上がる。



「お前が?」



「私の好きな人も、ずっと私以外の女の人を追いかけているんだ。だから、その人が他の女の人の話しているのを聞いていると、やっぱり辛い・・・。」



 意外だった。こいつに、そこまで女らしい部分があると感じたことがなかったからだ。




「そっか・・・。」



 それだけ返事をして、再び空を見上げる。



 4月とは違う、もうすぐ夏の到来を知らせる暑い太陽の視線。



 今は脱いでいるからあまり感じないが、そろそろ冬服で学校に通うには辛くなってくるだろう・・・・。



< 38 / 221 >

この作品をシェア

pagetop