夏と秋の間で・甲
「あのさ・・・・こういうのも、アレだけど、『奪おう』とか考えなかったの?真樹子の今の彼、元々私の友達と付き合ってたんだよ。」



「知ってるよ。でもな・・・・。」



 めんどくさそうに、頭をかくと・・・



「なんだろう?なんていうのかな・・・早川先輩だからってわけじゃないんだけど、大場さんが彼氏のことをしゃべる顔が、うれしそうに見えたんだよな・・・・。」



 口にした瞬間、5月3日の出来事が脳裏をよぎり、辛くなってくる。



「ほぅ。それで?」



「なんだろう、かっこつけるわけじゃねぇけど、そんな幸せそうな大場さんの気持ちを踏みにじってまで、彼女のことを手に入れたいかって言うとな・・・。」



 そう・・・・恐れたことはたった一点。万が一自分が告白して、彼女の頭が混乱すること。



 あんなに幸せそうな彼女の気持ちを、自分みたいなチャラチャラした人間が踏みにじることなど、許される行為ではない・・・・。



「つまり、自信がないわけだ・・・・。彼女を幸せにすることが自分にはできないって。」



 簡単に言うと、そういうことなのだろう・・・・。



 ならば、簡単だ。・・・・混乱の正体がはっきりした。








 俺は、早川先輩に嫉妬している・・・・。








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