夏と秋の間で・甲
「ねぇ、私ってそんなに魅力ない女性かな?」



 大場さんが、自分の顔を眺めて尋ねる。



 その表情は笑顔であったが、眼から頬に流れる滴が、望巳の胸を刺した。



 なんて切ない、そして愛しい泣き顔なんだろう・・・・。



「そんなことないよ。」



 偽りではない、本心からの否定。



「大場さんには、大場さんにしかない魅力がたくさんあるよ。きっと、早川先輩はその魅力に気付いてないだけだよ。」



 そもそも、どうして早川先輩はこんなに魅力的な大場さんをほっておいて、何の魅力もないサンマに走るのかが分からない・・・。



「俺が、早川先輩だったら絶対大場さんを手放さないのに・・・。」



 思わず口に出た。



 大場さんは何も察しないだろうが、そこに含まれる意味は大きい・・・。



「フフフ・・・ありがとう。優しいね斉藤君。私、そういう人好きだよ。」



 自分に向けられる大場さんの笑顔。



 もちろん他意はないのだろうが、大場さんに『好き』と言われた瞬間、自分の気持ちがとても高揚したのが分かった。



(あぁ・・・俺、やっぱり大場さんのことが好きだ・・・・。)



 そう考えると、情けなかった・・・・。



 その後、望巳と大場さんは携帯の番号を交換し、しばらく他愛もない会話をしてから駅で別れた。



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