夏と秋の間で・甲
「う・そ・だ・よ。引っかかった~。馬鹿じゃない?そんなことある訳ないじゃん!」
望巳を指差して馬鹿にしたような笑いをあげる亜紀。
今ひとつ信じられないが、亜紀の表情を見る限りやっぱり嘘なのだろう・・・。
「なんだよ・・・。」
一度向けた顔を、再び空に戻して、思わずそんな言葉が出た。
「心配した?」
「別に・・・・。」
ただ、言われた瞬間、心の引っかかりのようなものがあったことは確かだ。
「・・・・先輩、頑張るってさ。大場さんのことをちゃんと気持ち向けられるように。だから、いい加減、私のことを忘れたい・・・って。」
そんなこと、わざわざサンマに言うことじゃないだろう?
「そうか・・・・。良かった・・・・。」
本心から出た言葉だった。
昨日の帰り道、隣から聞こえた大場さんの声は、本当に切なそうだった。
好きな女性のあんな声、二度と聞きたくない・・・。