夏と秋の間で・甲
「ありがとう。」



 焼きあがったお好み焼きは多少まわりが焦げていたが、大場さんが焼いたと言うだけで、とても美味しく感じだ。



「ううん。せめてものお礼の気持ち。昨日はアリガトね。色々、話し聞いてくれて・・・。」



 やっぱり、そういう気配りができるあたり素敵な女性だと思う。



「いいよ、むしろ、俺なんかに話してくれただけでもうれしいよ。」



 もちろん、本心から出た言葉。



「ソレでね、斉藤君。お願いなんだけど・・・」大場さんは顔をうつぶせ、少し落ち着かない態度を見せながら「これからも、何かあった時には相談に乗ってほしいんだ・・・・。」



 か細い・・・だけど、確実に聞こえる声だった。



「もちろん。俺でよければ、いつでも相談に乗るよ。」



 ソレに対し、望巳はハッキリとした声で答える。



 正直、大場さんが自分以外の男で悩む姿なんて見たくないと思った。



 だけど、それで自分みたいな人間が大場さんの力になれるのなら、ソレも悪くない気がした・・・。



「ありがとう。やっぱり、斉藤君に話かけてよかった。」



 やはり、美しい笑顔をしている。



 昨日の悲しそうな泣き顔も良かったが、はやり、彼女は笑ってきた時が一番綺麗だと思う・・・。



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