夏と秋の間で・甲
「それで、さっそくなんだけど、昨日あの後、色々考えたんだ。」



 二枚目に焼いたお好み焼きを、自分の皿にとりわけ、青海苔をかける大場さん。



 自分が焼いたものより、綺麗に焼けているのは鉄板に油がにじんできたせいだろう。



 サンマや速人が同じコトやったら、絶対に許さないだろうが、大場さんに対しては何もいえない・・・。



「色々って?」



 お好み焼きを口に含みながら声を出す。



 やっぱりこげた端っこの方はちょっと香ばしいな・・・。



「うん。色々って言うのは、これからのこと。このまま、先輩と付き合い続けるのか、これ以上は無理だと思って、別れてしまうのか?」



 先輩と大場さんが別れる!?



 その言葉が出た瞬間、願ってもないチャンスのように感じた。



 彼らが別れれば、自分が食い入る隙ができる。



 しかし、こんなに悩んでいる大場さんを目の前にして、そんなことを願うなんて最低以外の何者でもない。



 望巳は、今浮かんだ喜びを何とか押さえつけようと、必死にお好み焼きに集中することにした。


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