月天使
すると彼は不器用なりに
「こうですか?」
と小さく笑った。
「えぇ、結大くん。貴方は笑ってる方がお似合いよ。ダンスも教えるから来て」
月様はダンスを踊るために
椅子から立ち上がった。
「さぁ結大くん、Shall we dance?」
綺麗な姿勢で彼に手を差し出した。
「はい!!俺にダンスの楽しさを教えてください。」
そう答えた彼は手を取って月様と踊り始めた。
この会話を聞いているとよく分かる…。
あの結大と呼ばれている彼は
極普通の庶民であること。
そして月様が彼を愛して
いらっしゃるんだと言うこと…。
そして僕が一番気になっていた嫌な視線は
由美子様のものだったのだと…。
由美子様は少し高い位置から僕と月様を
観察しておられたんだ。
僕の隠れている木の影からは
その姿がよく見られた。
【これは一体どうなっているんだ…】
心の声が理解できないと叫んでいた。