月天使
『私、今暇だよっ!!だから行こっ!!』
夏美の慌てた声を聞いた時、少しホッとした。
彼女も俺みたいに緊張してたんだ。
自然と電話での会話で笑顔になってしまった。
「じゃあ、いつもの所で9時待ち合わせな!!」
『うんっ!!楽しみにしてるね♪』
―――プツッ…。
電話が切れた。何でだろう。
俺は夏美が電話を切るのを待っていた。
自分から電話を切るのが怖かった。
何でだろう……。
ただ、好きだった。
彼女の全てが好きで好きでたまらなかった。
ただ、幸せだった。
彼女の笑顔が見られるだけで…。
「お待たせっ♪*陸、さぁ行こ!!」
俺と彼女が初めて出会った場所。
誰もいない放課後の高校の屋上。
そこに1つ綺麗に笑う夏美がいた。
「おぅ!!夏美…?手空いてる…。」
俺は左手を差し出した。すると、照れたように
「あっ…はい///」
と可愛らしい笑顔を見せた。
ギュッと繋がれた手のひらには
お互いの温もりが伝わるようだった。
「ねぇ…陸?ずっとこうしてたいね。」
彼女の一言が胸に大きく響いた。
俺は絶対この手を離したりはしない。
「夏美…好きだよ?」
夏美を見つめたままキスをしたんだ。
彼女は俺にとって青春そのものだった。