月天使

この日は俺が直接夏美の家に行った。

真っ暗な空の下、ドアを開けて家から

出てきた彼女を見て思わず目を反らす。


だって、回りは暗くてあまり

見えないはずなのに夏美の浴衣姿は

あまりにも綺麗すぎたから。


「ねぇ…陸?」


「ん?」


俺は夏美の手を握ったままタッタと歩く。


「こっち見てよ!!」


ちょっとスネたように頬を膨らます。

くそぉ…夏美め~。人の気も知ら

ないで…。お前、可愛すぎるんだよ!!


「あれ…?もしかして照れてるの?」


夏美が俺の顔を覗きこむ。


「わっ…見るなよ!!」


俺は思わず顔を隠した。

だって、今の顔はきっと誰より真っ赤で

どんなに誤魔化しても

誤魔化しきれないと思ったから…。


「もぅっ!!陸ったら!!大丈夫。
顔が赤いのはお互い様だよ?」


困ったように笑う夏美を見た。


「あっ…ホントだ!!俺より赤い*」


思わず笑ってしまった。


「あっ!!もぉっ///陸のバカ!!」


恥ずかしそうに

微笑む夏美を隣で見つめた。

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