月天使

―――そして冬が来た。


俺はついに彼女の抱えている苦しみに

気付いてあげられなかった。


夏美の抱えているものは

あまりにも大きすぎて、

一人では抱えられなくなっていた。


自分の部屋のベットに寝そべって

夏美の事を考えてた。俺は夏美を

幸せにしてやれてるのかって…。


真っ暗な夜が切なくて、雪の積もる

この季節は少し寂しく感じた。


―――プルルル…


と突然一本の電話が鳴り響いた。

少し嫌な気がしたが俺は電話に出た。


「はい、もしもし?」


『…っく…。あっ…っく。陸…っ。』


あまりにも辛く苦しい声だった。

この声は…


「夏美!?泣いてるのか?今、
どこにいるんだ!!すぐそっちに行く!!」


俺はベットから思わず立ち上がって、

自分の部屋を抜け出していた。だけど、


『来ないでっ…。私っ…達
…っく、もう別れよ?…っく…。』


その一言がこの胸の中深く響く、

悲しみが夏美から溢れだしていた。


俺はバカなんだよ!!それは一番夏美が

知ってることだろ?だからっ!!


「何があったか知らないが俺は行く!!」


俺は家を飛び出したんだ。

なにも考えずにただ守るもののために

走り続けるんだ。それが俺だから。

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