月天使
あの日の夏美の声、髪、小さな手
全部覚えてるんだ。
「瑠璃愛…夏美の葬式の日に行ってくれ。」
「………っ!!ここはもう良いの?」
「あぁ。もういないんだ…夏美は。」
「わ…分かった…。」
瑠璃愛はまた魔法のホウキを使って
力を発動させた。
―――ブワァァッ…!
また、一瞬深海の世界が広がった。
そしてたどり着いたのが夏美の葬式会場。
「来たな…夏美のお葬式。」
「えぇ。来たみたい…。」
俺はこの日、会場内に入れなかった。
何故なら夏美に会わせる
顔がなかったからだ。
"夏美を見送る資格さえも無い。"
あの頃そう思っていた俺はただ外で手を
合わせていることしかできなかったんだ。
「瑠璃愛、中に入ろうか。」
俺は瑠璃愛に笑いかけた。
瑠璃愛は少し慌てたように
「う…うんっ!!」
と俺の隣にかけてきた。
会場の中ではたくさんの人が涙で
悲しみに包まれていた。
俺は後ろの方に2つ座布団が空いてるのを
見て瑠璃愛と一緒に座った。