月天使

「もしかして…!?」


「はい。私は両親を知りません。悲しい事はないんですけど、憧れはありましたよ!!」


少しだけ笑ってふれあはあたしを見た。


「夕陽の中、両親に手を繋がれて家に帰る子達が憧れだったけど、辛かったです。」


ふれあは遠い空を見ていた。

どこか遠くにいる両親を

探しているように見えた。


「ごめん…変な事聞いちゃって…。」


「いいえ。良いんです!!ただ知りたかっただけなんです。叱られた後の父の優しさや、泣いた後の母の手の温もりとか…。」


「ふれあ…。」


両親がいないってどういう事

なんだろうか…あたしには分からない。

同情の優しさは悲しすぎて出来ない。


「それより、月さんの両親の事、
私に教えてくださいよ♪」


そう言って微笑むふれあは本当に

強い子なんだと思わされた。


「いいよ。」と言ってあたしは話始めた。


「あたしの父さんはね…
ピアノが上手で無口。ピアノで世界を回っていたから時々しか会えなかったんだ。」


「なるほど~っ!!」


「で、母さんはあの望月由美子。
会社を一人で建てて、世界的にも注目されているんだ。あたしの誇りでもあるよ。」


そう言うとふれあが突然目を真ん丸に

してあたしに驚いた顔を見せた。
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