月天使
『月くんは知ってるのかしらね?』
思わず全く関係のない葉澄に
訪ねてしまった。でも、彼女は
『彼は知らなすぎます。この世の全ての
事を理解しきれていないんですよ…。』
と悲しい顔をした。何だか嫌な気がした。
何かとんでもない事が始まるような…
そんな気がしたんだ。
そしてそれから少したったある日、
葉澄がいつものように進治さんから
届いた情報を伝えてきた。
『どうやら、泉佳那の目的は地獄への扉を開くこと。この世界を自分達の物にすることらしい。どうやら僕はもう生きていられない。約束、守れなくてごめん…ごめん。』
それは弱々しい言葉だった。
葉澄が出した進治さんの声は
あんまりにも苦しげだった。
この日の空はずっと涙だった。
私の涙も枯れてくれなかった。
私にとっての大先輩を失った。
夢なら覚めてほしいと思った。
何度も…何度も…。
でも葉澄は冗談で進治さんの声を
使って私に伝えるはずがない。
これは夢じゃない。現実なんだから…。