LOVE PRINCESS(陽呂&心菜)
鞄から取り出した携帯電話のボタンを押し、
「車いらないわ。
うん、陽呂と帰るから」
なんて嘘を吐いて、門の前で待つ車を帰らせてしまった。
だって……
傘持ってないよね、陽呂。
鞄に入れた携帯電話の変わりに出したのは、折りたたみ傘。
……仕方なく。
そう、“仕方なく待っててあげる”んだからっ。
誰に言ってるのか何度も心の中で同じセリフ。
来た道を戻り、再び教室に戻ると誰も居なくて。
ガラーンとした中、陽呂の机に鞄と上着が置いてあるのを見つけた。
そこに座り、陽呂の上着の上に寝てみる。
あ……陽呂の香りだ。
ふわっと香る陽呂の匂い。
ギュッと胸が締め付けられる。
「えーまじで?」
急に廊下から聞こえた声に、慌てて起き上がった。
だんだん小さくなる声で、人が通り過ぎたんだってわかると、ホッと胸を撫で下ろした。
私、何してんの?
これじゃあ……変態じゃない。
真っ赤になった頬を手で押さえ、同じ場所に額をつけた。
でもそこは、やっぱり陽呂の香りでいっぱいで。
優しく包まれてるみたい。
それが心地よくて……
知らぬ間に眠ってしまったんだ。