LOVE PRINCESS(陽呂&心菜)



「……菜さん、こーこーなっ!」

「うわっ!?」


ハッと気付いた私の数センチ前には、陽呂のドアップ。


「なーに、雨見て浸ってんすか? 何回も呼んでたのに」


傘をポンッと開きながら、振り返りながら笑ってる。


ここはスーパー。

買い物に来て、レジを済ませた後に買い忘れた物があるっていう陽呂を外で待ってたんだ。


「行きますよ?」


そう笑いかける陽呂の片手には、大きなスーパーの袋と傘を器用に持っていて。

もう片方の手は、私に差し出されてた。


その手を取るのが少し恥ずかしくて。

熱くなる頬を隠せなかった。


少し触れた手を、力強く握り返した陽呂に引っ張られて歩く。



たったこれだけで幸せ。



自然と零れる笑顔。


「あっ! 今懐かしい事思い出した!」

「何?」


たまに自然と“敬語”じゃなくなるのが嬉しい。


「中学ん時、心菜さんと相合い傘した事ですよ」

「へっ?」

「あれー? 覚えてない?」


いやいや……。

さっき雨の中“浸ってた”のは、それですけど。
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