Friendship
「…ごめん。勝手に。疲れた、から。」
周りの自然の音にかき消されてしまいそうな声で謝られた。
少女はそのままゆっくりと森の方へと歩いていく。
「ちょっと待って!」
私はその不思議な少女を追いかけて森へ入ったが、雨上がりの木の根元は滑りやすく、母の忠告もとっくに忘れて案の定足を踏み外して転んだ。
「うぉあ!!」
自分で起き上がろうとした私だったが、いきなり目の前に手が差し出されているのに気づき手をとった。さっきの少女だった。
「…大丈夫?」
「あ、あのっ、…ありがとう。あ、お礼になるのか分からないけど、これ使って。タオル。顔とか汚れちゃってるから。」
私は持ってきた黄色いポシェットの中からタオルを取り出して少女に手渡した。
少女は驚いたような顔をして頭を下げると、またゆっくりと森の方へと進み出す。
私は勇気を出して聞いてみた。
「名前!聞いてもいい?」
少し間があったが、少女は振り返って口を開いた。
「ゆず。私の名前は、ゆず。」