誰かの為のラブソング
流れるような雑踏は、その空間をただ闇雲に取り残していた。
時がそこだけ止まっているかのような錯覚を覚える。
リズはまともに理久の顔を見ることが出来なかった。
「……で?
いつまで黙ってるつもりだよ。」
不機嫌そうな理久は、とうとう横を向いてしまった。
「……………。」
言葉が見つからなかった。
何を言えばいいのか。
何から話せばよいのか
リズには分からなかった。
「……何とか言えよ。
このまま逃げまわる気か?」
理久はため息交じりに流れる人混みを眺めていた。
「また、繰り返すだけだろうが。」
リズは俯いたまま、唇を噛み締めた。
「…誰もお前のことを嫌いになったりなんかしねぇよ。
樫村だって、
あいつはそんな奴じゃないことぐらいわかってるだろうが。」