誰かの為のラブソング
「今日は寝なかったんだ」
「えっ?」
彼は悪戯っぽくこう言うと嬉しそうに笑った。
「ちゃんと聴きに来たのにわざわざ寝たりしないですっ」
リズはムキになりながら思わず言い返した。
「ホントすぐ真に受けるよなぁ…」
彼は必至に笑いを堪えているようだった。
「そーいえばまだ名前、
お互い知らないよな。
俺はユウ。
あ、もしかして知ってた?」
リズの横に居座る彼は話す度に明るさを増していく。
「あ…はい…
なんとなく…」
なんとなく知っていただなんて変な表現。
なんだかリズは無意識のうちに警戒しているようだった。
「名前は?」
「…川嶋莉子です。」
何故かムッとしている自分がいて、意味がわからなかった。
「…リズ。」
囁くように彼はリズの名前を呼んだ。
「………?」
それは吸い込まれるような優しい甘い声だった。