誰かの為のラブソング

リズは思わずその甘い声が発する先を見つめた。


「………いい名前だね」


微かな夜風が、路上の独特な匂いを運んでくる。
リズは彼に吸い込まれていた。



「…え…はい…
よく言われます…」


なんだか恥ずかしくてリズは思わず下を俯いた。

突然、彼は堰を切ったかのように笑い始めた。


「そこ、フツーはとりあえず否定するだろ〜」

どこがどう笑いのツボにはまるのかリズには理解出来なかった。


「あの…からかってますか?」


ユウはいつまでも止まることのない笑いを必至に堪えると平常心をなんとか取り戻した。


「悪い悪い。
リズはバカ正直なんだね。
いや、いい意味でさ」


また不機嫌になるリズを理解していたのか、ユウは慎重に言葉を選んだようだ。


「…できるなら純粋と
言ってくれませんか?」


「じっ自分で言うかよー あははっ」

もう彼の笑いは底を知らないようだった。


そんな彼を尻目にリズはため息をついた。


なんだか、彼の印象が
全く違ってきているのは気のせいだろうか。


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