誰かの為のラブソング

「背伸びしたら、背中が吊ったんだよー
不可抗力だって」


「不可抗力って。
私のは明らかに違うじゃないですかっ〜」


「でも気持ちいいだろ?」

蒸し暑さが吹っ飛んで爽快な気分なのは確かだ。


「…うん…」

夜風が吹く度に肌に張り付いた水が少しだけ乾いていく。


「…おっ!
星が綺麗だ〜」

水に浮かんだまま、彼は夜空を仰いでいる。

リズはつられるように天を仰いだ。


「…見えない…」

駅前のビル群は煌々と光を発しているせいか、夜空は薄暗い色をしていた。


「あ〜ダメダメ。
そこからじゃ見えないよ。」

ユウはジェスチャーで再び噴水に仰向けに寝ろと言っているようだ。

リズは何も考えずに再び背中から水の中に沈んだ。

ゴンッ。

勢い余って頭から飛び込んだリズは思いっきり頭を噴水の底で打った。


「いったーい!!」

夜空の星を見る所か、
目の前で星が回っていた。


「底浅いんだから
フツーゆっくり入るだろぉ〜」

彼は腹を抱えながら爆笑している。

「だってっ〜!!」


頭思いっきり打ってやんのっ〜とゲラゲラと笑う彼にリズはつられて笑った。

「あはははっ」

何やってんだか私。

「リズって、ほんと
面白すぎっ」

彼の笑いは延々と続いていた。

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