誰かの為のラブソング
「ちゅーか、リズちゃん
ドン引きしてるじゃねぇかよ。
そんなことより、お前に用が
あってだなー」
渉は黒い短髪を掻きながら
ジーパンのポケットから一枚のプリント用紙を取り出した。
水に濡れてインクが滲みまくっているプリントは、クレイジーキングダムのライブチラシだった。
「対バンライブに穴、開いてさ
悪りぃけど出てくれねー?
事情が事情だから、了解して
くれよぉー」
「……………。」
突然、ユウの顔色が変わった。
プリントには
CRAZY KINGDOM
The fifth anniversary,LIVE
CrossOver
PowerShot Night
と記されていた。
「この対バンライブは
特別だからさ、RozeeL(ロゼル)と対抗出来るバンドじゃなきゃ意味ねぇんだよ。
対抗できるのはお前しか
いねぇだろぉ?」
渉の言葉にリズは目を見張った。
プリントのインクは滲みすぎて、
RoZeeLという文字は全く見当たらなかった。
「…バンドじゃねぇし」
ユウは間違いを正すように
こう言い放った。