誰かの為のラブソング



「だからめちゃくちゃ
いいんだってば。
聴けばわかるって、」

夕暮れ時、駅の噴水広場では
何やら若いカップルが会話をしていた。

リズは噴水のブロック枠に腰を下ろし、ただ時が過ぎるのを
じっと待っていた。

耳を澄まし話を聞いていると、それはユウのことだとようやくわかった。


「口コミで広まってんだよ、
やたらいいって。
ライブ始まるとすげぇ人でさ」

彼氏らしき男は一生懸命、ユウの音楽性について熱弁していた。

「えー、そうなんだー
それより、真美はカラオケの方がいいー」

「カラオケなんかいつでも
行けるだろぉ?!」

今すぐここを立ち去って、
カラオケに行こうと主張する
彼女を、彼は必至になって食い止めようとしている。

立場的には彼女の方が上の立場といった感じだった。

リズは周りを見渡した。

もしかして、ここにいる人達
みんなユウのライブ目当て
なんだろうか…?

やたら若者ばかりがたむろっている。

地方都市の駅前の光景としては
少し異様だった。


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