誰かの為のラブソング


「よぉ〜
リズちゃん!」

突然、声を掛けてきたのは
渉だった。


「あ、こんばんは。」

Tシャツから覗く均整のとれた
渉の腕にタトゥーが見えた。

「もしかして、ユウ待ち?」

「っそっそんなんじゃないですっ」

確実にユウのライブ待ちなんだけど…ね…

何故だか正直になれないリズがそこにいた。

「渉さんこそ…」


「あ、俺?
アイツをくどき落とす為に
また来たさー。
どうだよ、この情熱!
我ながら惚れ惚れするわぁ」

渉はまだ諦めきれないようだ。

「おーい。
引かないでおくれー」

リズは思わず笑った。

「アイツ妙な所が頑固だから、マジ自信ないんだけど。
どうしたら、ライブ出てくれるかリズちゃん教えて〜な〜」


…そんなこと言われても。

付き合いの長い渉さんでさえもわからないなら、あたしなんかがわかるわけないよ。

リズは心の中でそう思っていた。

「あの、渉さんって
ライブハウスで働いているんですか?」

率直な疑問をリズは唐突に彼にぶつけた。


「あ〜言ってなかったけ?
クレキンの店長兼支配人やっとるんよ、実は」


「えっ、じゃあ…
あずさんのお兄さんっ!?」


リズは思わず声を上げてしまった。



< 143 / 234 >

この作品をシェア

pagetop