誰かの為のラブソング
「違うわ、インディーズレーベルで
CD出してるんよ。
自主制作盤ってやつ。
実はオレ、レーベルも経営してたりなんかしてぇっ」
自慢げに言う渉は、のけ反り返ってこう言った。
「……経営してるんですか、
凄い…」
そのアルバムのジャケットは、
バンドのマークらしき絵柄が中央に 載っていた。
「オレなんか趣味的だから、
本気でプロを目指してるユキやユウの方が凄げぇよ。
オレが一度 諦めた夢をあいつらはやってのけようとしてるし。
あいつらなら、実現出来る気が
するのはオレだけじゃないはず。」
真っ直ぐに何かを見据える渉は、確信しているようだった。
「…一度諦めた夢って、
デビューすること、ですか?」
「そう、オレも本気でプロを
目指してた頃があってな。
何度もデモテープをレコード会社に送ったりしたもんよ。
ストリートもやったな〜。
スカウトマンに声でも掛けられないかって、淡い期待抱いてたし。
昔、ここで歌っとったんだー。」