誰かの為のラブソング
「えっ!渉さんも?! 」
「ああ。ここ、昔は週末になるとストリートミュージシャンで溢れ返るほど有名な場所でさ。
実際ここから、声掛けられてデビューした奴がいてよ。
でも、駅の再開発計画で噴水広場は縮小されて、いつのまにかミュージシャンも減っちまった。
今は、数えるほどしかいないから、変わっちまって寂しいんだどな。」
駅の再開発計画は大規模なものだった。
バスターミナルを拡大するかわりに、駅の真ん中にあったシンボルの噴水広場は縮小され、隅っこの方に移動させられてしまった。
「それで、時の流れと共に
オレも夢を諦めて、今に至るっちゅーわけ。
好きなバンドしながら、ライブハウス経営するのも全く悪くねぇし。
あいつらにも出会えたし」
渉は遠い目で、噴水広場にいる若者達を眺めていた。