誰かの為のラブソング
「…結構、時が経つのは早いもんよー
あいつ、オレがストリートしてた時の一番の常連客だったんよ。
毎晩のように通ってきてさ、
昔は今と正反対で、背なんか
マジ小っこくて、かわいい子供でなー」
当時、渉は25歳で、
ユウは13歳だったらしい。
ユウは毎晩、家から飛び出しては渉のライブを聴いていたそうだ。
ユウの小さい頃って、
どんな感じだったんだろう…
余りにも想像がつかなかった。
「あいつも思春期特有で色々あったみたいで、よく話をきいてやったもんよ〜。
ライブした後は恒例の渉兄やんのお悩み相談室。
なんか思い出してきて、
変に懐かしーわ。」
渉はあぐらをかいた膝小僧に肘をつきながら、顎ヒゲをさすっていた。
「…なんだか…今の彼からは全く想像つかないです…
ユウさん、明るいし、
楽しい人だし…」
「ま、時と共にあいつも成長したかなぁ。
いや、あいつの場合は、オレの教育が しくったかもなー」
あははと大笑いする渉と共にリズは一緒に笑った。
「とにかく、オレはとことん
ユウや友喜に付き纏うつもりよー。
オレは、あいつらの成功を見届ける責任があるっちゅーか。 」
「…お兄さんの気持ちで?」
「そう!兄やんとして出来ることはやるつもりよ。
あいつらには、心から笑えるようになって欲しいしな。」
「…………。」
なんだか最後の渉の言葉がとても意味深に思えて、リズの心がざわついた。