誰かの為のラブソング


「リズ、何か飲む?」

ユウのライブが終わり、集まっていた観衆がまばらになった頃だった。

「えっいいよ、あたしが買ってくる。」

何十曲も歌ったユウの方が疲れてるはずなのに変に気を遣われ、リズは落ち着かなかった。

「いーよ、別に。
コンビニ近いし。」

「ユウは疲れてるんだから
いいって。
あたしが行ってくる。
コーヒーでいい?」

リズはコンビニに向かおうと
立ち上がった。

「ダーメ、夜道は危ないし。
リズはコーラ?
あ、牛乳?」

ユウはずる賢く笑った。

「〜子供じゃないんだから〜
牛乳ってなによー
とにかく、あたし行ってくる。」

「だぁからぁ、いいって、
オレが行くから、
てゆうか、オレに行かせてくれって。」

「すぐそこだから、いーの。」

なかなか折れない者同士のやりとりは、正直キリがなかった。


「なら、一緒にいこっか。」

ユウは含み笑いを浮かべていた。

「あ、そうだよね。
一緒に行けばいいんだ。」

リズの言葉にユウは笑っていた。

「も〜また、笑ってる! 」

「だってさ〜、すげぇ頑固なんだもん〜」

ゲラゲラとユウの笑いは止まらなかった。

二人並んで、駅前のコンビニへと向かう。

コンビニはすぐ目に見えるほどの距離にあったが、そこにたどり着くまでが異常に長く感じる。

何故か変な沈黙が流れていた。


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