誰かの為のラブソング
「……………。」
その流れに身を任せるように、いつのまにか残っていた仲間達も姿を消していった。
その場に取り残された理久は、ただぼんやりと眺めていた。
アイツの純粋な笑顔。
その純粋な笑顔を今まで忘れていた気がした。
アイツは、
何にも染まっていない
透き通った笑顔の持ち主だった。
いつもバカげた話でふざけ合っ
ては笑っていた。
アイツが笑うから、ふざけていた。
アイツが笑うから、何でもないことでも楽しかった。
「……………。」
その笑顔を奪っていたのかもしれない。
アイツを失うほど、
奪っていたのかもしれない。
途切れた想いに交差するように 人の流れがぱたりと止まった。
しんと静まり返る空間は、嫌がおうでも理久に襲い掛かる。
その静寂が堪らないほど嫌だった。
吐き気がするほど嫌悪感に苛われた。
想いが大きれば大きいほど
相手に伝わるなんて、
本当は嘘なのかもしれない。
理久はずっと見つめていた。
自分には向けられることのない
屈託のない笑顔を。