誰かの為のラブソング
「ゾーンプレス!
ディフェンダー!ミッドフィルダー!
フォローに入れよ! 」
放課後のグラウンドに、サッカー部顧問の上田の声が鳴り響いく。
部員達は疲労感を抑えながら、 広いフィールドを走り抜けていた。
「球出し悪りぃぞ!
ウイング!!
お前等コンビネ-ションなってねぇぞ!」
サッカー部のレギュラー総出の練習試合は、全国大会を想定したハードな練習だ。
顧問の上田の熱い指導は明らかに部員達の士気を上げていた。
ボールはディフェンダーの間をすり抜ける。
フォワードよりスルーパスが通ると、理久は体勢を崩したままループシュートを放った。
ゴールを阻止しようと飛び出してきたゴールキーパーの頭上を越すように放物線を描くが、弾道が高すぎるシュートはゴールポストの上を越えてしまった。
理久は天を仰ぐようにしながら荒い呼吸を整えた。
呼吸をする度に無数の汗が首筋から流れ落ちる。
「フリーズ!
但馬!来い!」
上田は試合を中断させると、理久を呼び出した。