誰かの為のラブソング
「何だ、あのプレーは!
やる気あるのか?!」
理久は上田に呼び出されると無言のまま、不必要に顔に掛かる前髪を掻き上げた。
「ウェッジコントロールも無茶苦茶!
集中力もない!
何考えてんだ!」
上田は容赦なく声を張り上げた。
「…………」
ようやく息が調った理久は、上目使いに上田を睨み付ける。
「遊んでるんじゃねぇんだぞ…やる気ないなら今すぐ帰れ!」
尋常ではない上田の怒号にフィールドに散らばっている部員達の視線が一気に集まった。
「……………。」
理久は無言のままフィールドに背を向けた。
「おいっおい理久っ〜
どこ行くんだよ〜!」
部員の一人が焦りながら、試合放棄する理久を止めに掛かる。
「普段言うこと聞かないくせに、何でこんな時だけ素直に聞くんだよっ」
「うるせぇ」
理久は聞く耳持たず、そのまま突き進む。
「神山、放っとけ。」
上田は疲れ切った表情を浮かべていた。
「上ちゃん、いいのかよっ!
大会まで時間ないっつうのに!」
「…いいんだよ。
但馬に伝えとけ。
メンタル鍛え直すまで出て来るなってな」
「えっ何でだよっ?! 」
「原田!
但馬の代わりにお前がストライカーに入れ!」
「いくらなんでも無茶苦茶だって!
理久抜きで大会出るつもりかよっ!?」
「…少しは自分達の力も信じたらどうだ?
チームプレイを乱す人間は必要ない。
但馬が抜けても支障はないさ」
顔色も変えず、こう淡々と断言する上田に部員達は不安の色を隠せない様子だ。
神山は上田の考えを理解出来ないといった様子で、ただ上田を見つめるしかなかった。