誰かの為のラブソング


「でね〜上ちゃんったら、
最近、言動がおかし過ぎてさ〜
ボケばっかりかまして、みんなからブーイングよー」

「えっ?上田先生っいつものことじゃないの?」

「それが明らかにおかしいんだって!
もうブーイング祭りよ」


リズは教室で笑っていた。

久しぶりの教室は何も変わってはいなかった。

みんなの楽しそうな笑い声。

それを掻き消すようにより一層盛りがっている男子のふざけた声が教室を騒がしくしていた。

「………?」


「どした? リズ?」


「あっ、理久は…?」


教室を見渡しても理久の姿がないことにリズは違和感を感じていた。

いつも教室の隅で男子連中と談笑している彼の姿が珍しくなかったからだ。


「但馬ね…
アイツも最近、変なんだよね…
上ちゃんと一緒よー

何か煮詰まってるのかも…」

愛香は机に頬杖をつきながら、溜め息を吐いた。


「…サッカー?」


「多分ね」


リズは理久の席をじっと見つめた。

ぽつりとそこだけが空白になっているようだった。



「それより!
リズ、今日帰りになんか美味しいもの食べにいこっ!」


いつもの切り替えが早い愛香の会話にリズは思わず微笑んだ。


「やだ〜美味しいもの想像してニヤついてるよ〜リズったら」


「ちっ違うってば〜」


愛香にからかわれながらもリズはしばらく笑いが止まりそうになかった。








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