誰かの為のラブソング
「愛ちゃん、寝不足って、
寝ないでずっと起きて何やってたの?」
「ん〜?メール…とか…」
何故か後尾になるにつれて声が小さくなる。
「ちゃんと寝ないとダメだよ? 終いには倒れちゃうんだから」
「はいはいー」
「もうっ!はいは一回でしょ〜?
明日、RozeeL(ロゼル)のライブある日でしょ?
体力付けとかなきゃライブで倒れちゃうよ?」
「ぶっ…なんかリズ、おかんみたい。」
「もうっ!
人が真剣に言ってるのにっ!」
怒りながらリズは隣にいる愛香に視線を投げたその時だった。
突然、曇ったような表情を見せる愛香に異変を感じた。
彼女の視線の先を辿るようにリズは前方を見つめた。
その先には理久とあの時告白していた女子生徒が並んで歩いている。
彼女は理久が話す言葉に敏感に反応しては楽しそうに笑っている。
小柄で清楚な感じの可愛い女の子。
理久はふざけては彼女の笑いを取っていた。
「………………。」
理久は会話に夢中になっていてリズ達に気づいていないようだ。
思えば、リズが学校に行くようになってから、理久とは一度も会話らしい会話はしていない。
理久は休憩時間になると教室から姿を消すし、昼も放課後もチャイムが鳴ると同時に真っ先にいなくなるからだ。
まともに見かけるのは授業中ぐらい。
前の席のリズは理久が気になり、授業中何度も後ろを振り返っては彼を見ていたが理久は寝てばかりいる。
全く、あれから理久と接する機会がなくなっていた。