誰かの為のラブソング
「では…この設問、前へ出て解くようにー…但馬!」
突然の教師からの指名にクラスメイト達の視線は一気に教室の片隅に集中した。
教室の一番後ろを陣取る彼は授業中だというのに完全に寝入っている。
リズは皆より遅れてようやく理久を見つめた。
机の上に身体を伏せている理久は全く気づいていない様子だ。
「おい、理久ー
起きろってば」
理久の前の席にいる男子生徒が無理矢理、理久の身体を揺さ振り起こした。
「…っんだよ…」
不機嫌な理久はけだるそうに声を上げた。
「但馬!
えらい余裕だな、
この設問、解け」
ようやく状況を把握出来たのか理久はだるそうに身体を起こすとゆっくりと黒板へと歩み寄る。
「なんか…但馬、最近荒れてない?」
「レギュラーから外されたって聞いたよ?」
「えっー!マジ?」
ぼそぼそと繰り広げられる噂話がリズの耳に入る。
「……………」
単なる噂…だよね…?
しかし、実際、何度か放課後のグラウンドに足を運んだが理久の姿はなかった。
リズは不安に苛われながら、教壇に背を向ける理久を再び見つめた。
「但馬、特待生だからといって サッカーだけしてればいいってもんじゃねぇんだぞ」
黒板に向かって設問を解く理久の手が止まった。