誰かの為のラブソング
「理久!
待ってっ!」
リズは彼の背中を追っていた。
こんなにも理久が遠いと感じるのは初めてかもしれない。
リズは一向に立ち止まらない理久の腕を闇雲に掴んだ。
「理久っ… 」
彼は背を向けたまま無言を通き通していた。
「あたしのせいだよね……
ごめん…」
リズは掴んでいた理久の腕を離さなかった。
掴んでいる手が熱くなるのがわかる。
「…何のことだよ?」
理久は振り返った。
「…部活のこと…
聞いたよ…
本当なの…?
もし、そうなら…」
全てあたしのせいなんだ。
理久を苦しめて
不安にもさせて
理久が壊れてしまうぐらい
傷つけたのも
あたしなんだ。
「…あたし、もう理久の気持ちを踏みにじるようなことはしないから…
だから、理久ーー」
「お前のせいじゃねぇよ。
オレの問題なんだよ…」
押し殺すような声で理久はこう告げた。
「でもっ…!」
「人の心配より自分の心配してろよ。」
射抜くような理久の瞳だった。
「…あたしは…
大丈夫だから…
もう、理久に迷惑かけたりしない…」
何度も何度も誓うようにリズは心の中で呟いた。