誰かの為のラブソング
しかし、ありえねー。
何もないあんな所で普通コケるか?
理久は何故か急いで階段を駆け降りていた。
「あ!理久君!
ちょっと、式、出ないで何やってるの?!」
通りすがりの女子生徒が声を上げた。
彼女の後ろには二人男子生徒が何やら大きな荷物を抱えている。
「あ〜園子さん〜
ちょっとおかんが急病で〜」
「さっきお母さんと話したけど?
理久がいないって無茶苦茶、怒ってたよ?
高校の入学式なんか一生に一度なんだからちゃんと出なきゃダメよ!」
」
「違う!違う!
妹! ついて来た妹でさ〜
ごめん!園子さん!
先、急ぐから!」
理久はそそくさと姿を消した。
「…もうっ!」
女子生徒はわかりきった嘘を見破ると鼻息を荒くした。
「放っとけよ。園子」
「そうそう、理久に何言っても無駄だって」
「〜でも!
お母さんが可哀相じゃない。
あんなに力入れて来てるのに」
「それより、友喜さー
今日午後からチケット捌きに行かないとやばいって。」
「…お前、またかよ…
余ったら顔向けできねぇだろが」
「わかってるよー
だいたいオレだけノルマ高いし! 」
「お前、時間に余裕あるだろ?俺、午後からバイト」
「んだよ〜あ、いた。
園子。
チケ買って」
「もう!裕!
人が真剣な話してるのにー!」
「だぁから、あいつは話聞かないから言うだけ無駄だって!」
「そんなことないの!
友喜からも言ってよ〜!」
「…はい、はい…」
三人は大声を張り上げながら長い廊下の先に向かって歩いていった。
「〜もう〜友喜まで真剣に話
聞いてくれない〜
なんなのよー!」
女子生徒の不満が静かな廊下にこだました。