誰かの為のラブソング


入学式の翌日は早くも通常授業が始まっていた。

ホームルームで自己紹介をし合った時に、あの彼女と同じクラスだということを知った。

2日目からぽつんと彼女の席だけが空いている。


彼女はまだ体調が悪く学校を休んでいた。


川嶋莉子…。


莉子と書いてリズと読むらしい。

とても響きがよくて、彼女にぴったりの名前だった。


「但馬ー帰り、着いてきてくれない?
担任に頼まれちゃってさ」


中等部から同級生の樫村愛香が何やら分厚い茶封筒を手にしていた。

「何それ?」

「川嶋さんだっけ?
休んでる子。
その子の家に届けてくれって〜

また来るんだからその時でいいと思うんだけどさ、期限付きの提出物があるからどうしてもって、言うわけ」


「明日来るだろ?
明日でいいんじゃね?
俺、今日 先輩に頼まれてチケット捌きに行かないといけねぇし」

「また?
今回はあたしはパスだからね」

愛香は溜め息をついた。

「わかってるよ。
お前も暇なら一度はライブ観に来いよ。
先輩のバンド、むちゃいいからさ。
チケ売るぜ」

「あ〜ダメ。
あたしインディーズには興味ないから。」

「あ、そ。」

理久はしょうがねぇなと言った感じに息を吐いた。


「それより、今日から部活始まるんじゃないの?
いいの?」


「あー…別に…いい。」


「ふーん…
じゃ、これ頼むね! 」

愛香は茶封筒を理久に渡すと教室を後にした。


「って、なんで俺なんだよっ!


大きな茶封筒と一緒に彼女の自宅の地図が付いていた。


まだ提出物の期限あるから、今日でなくていいか。


理久はそう思った。


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