誰かの為のラブソング
「但馬、いつになったら練習に参加するんだ?」
サッカー部の顧問兼監督の上田は敏腕で有名だった。
その実績を買われ、今年から正式に高等部の教員として中途採用されたのは有名な話だ。
上田とは何回か顔を見掛けただけで対した面識はまだなかった。
高等部に上がってから、まだ一度もサッカーの練習に参加していない理久は、ようやく目の前にいる男が顧問だということを認識した。
「…………。」
「何で黙ってるんだ? 」
「…………。」
理久にとって今はサッカーなんかどうでもよかった。
「…別にいいよ」
諦めに似た理久の言葉に上田は敏感に反応した。
「そう自暴自棄になるな。
話は中等部の監督から聞いてる。
俺は理由なんかなくてもいいと思ってる。
お前が心の底からサッカーやろうと思うまで、待ってるからな。」
上田の言葉が理久に重くのしかかった。