誰かの為のラブソング


「……………。」

気がつくと理久は閑静な住宅街の中に立っていた。

まだ新築したばかりなのだろう表札が真新しいその家は水を打ったように静まり返っていた。


理久は彼女の部屋らしき場所の出窓を見つめた。


…なんで、ここに来てるんだよ

俺は…


理久は自分の心に率直に向き合った。


気がつくと、ここにいた。

無意識のうちに彼女の元へと辿り着いていた。


会ってどうする気だよ?

家まで行ってさ、
これじゃストーカーだろ。

いや、担任からの提出物渡すだけなんだから、別におかしくはねぇよな…。

家のインターホンを押した後に理久は自問自答を繰り返した。

押してから気づくなんて、普通有り得ないだろ。

なんでこんなに後ろめたいんだ?
意味わかんねぇ。


何度もインターホンが繰り返し鳴り響くと家の中から物音がした。

カチャ…

静かにドアは開いた。

「……どなた?」

家の中から出てきたのは老婦人だった。

「…あの…えっと… 」

上品な老婦人はどことなく彼女に似ていた。
きっと彼女が年を重ねるとこんな風になるんだろうな。

彼女の面影を抱いていた。

「…リズさんいますか? 」

ほとんど開き直りに近かった。

理久は何だか目の焦点が合っていない老婦人に恐る恐る聞いてみた。

「リズ?
そんな子はうちにはいないよ。

うちの子はあおいだよ」

あおい??

「…そんなはずは…確かにここは…」

その時だった。

「おばあちゃん、誰か来てるの?」

彼女の声がした。



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