誰かの為のラブソング
それから毎朝、理久は彼女の登校を待っていた。
教室の入口に誰かが入ってくる度に視線がそっちへと向かう。
彼女ではないことがわかると自然と溜め息が出た。
やっぱり、来づらいのかな…
長い間、休むとなかなか行きづらくなる気持ちはわかる。
わかるけど…
「……………」
このまま彼女との接点を失ってしまうことがどうしても嫌だった。
…俺…
やっぱりストーカーじゃねぇかよ。
理久は早朝の住宅街の中で佇んでいた。
いつまで経っても登校してこない彼女の家の前で、ただ彼女が出てくるのを毎朝待っていた。
犬の散歩をしている通りすがりの人達が変な目で理久を見ている。
…やばすぎる…
やってること、やばすぎじゃね?
俺…
他人の視線に耐え切れず、理久はとうとうその場を離れた。
ようやく冷静になって考えてみると我ながら、普通じゃないことに気づいた。
きっと彼女もそんな俺を部屋の窓から見ていて、よけいに気持ち悪がって登校しようにも出てこれないのかもしれない。
「もう…やめよ…」
自己嫌悪に苛われた理久が重い溜め息をついた時だった。
「あの…」
背後から女性の声がして理久を呼び止めた。