誰かの為のラブソング
「義母は認知症…痴呆があって…わからないの…
あおいは、リズのお姉さんで、今はもう…いないの…」
「あおいはいるだろうに、
何を言ってるんだよ!
この子は!」
突然、祖母は声を荒げた。
「お義母さん!
あおいは死んだのよ!
今はいないの!
家にいるあの子はリズなのよ!なんでわかってくれないの!」
祖母に言い聞かせるように母親は強く言い放った。
強い口調の母親に面食らったような表情をしながら、祖母はとうとう黙り込んでしまった。
「…リズには姉がいたの。
でも突然、交通事故で亡くなって…。
私達はいなくなったあおいの分までリズに愛情を注ぎ込んだわ。
その溺愛が大きくなりすぎて、私達はリズにあおいの変わりを求めるようになってしまった…
それが原因でリズは心の病になってしまったと病院で言われたわ…
全部、私達が悪いの…
あの子を苦しめて追い詰めて逃げ場をなくしてしまったのよ…」
母親は祖母の手を握り締めながら泣いていた。
「お義母さん、大きな声を出してごめんなさいね…
お願いだから、家にいて下さい…」
きっと彼女のあの時の涙は、両親に対しての涙なんだ。
大好きな人の気持ちに応えれない自分が情けなくて、どうしようもなく辛くて悲しくて…。
だからあんなに泣いていたんだ。
理久は心が締め付けられる思いに襲われた。
「……だから…
閉じ込めるんですか…?
お義母さんのように…」